天文学的に“朔旦冬至”を見てみる

2014年12月22日は『朔旦冬至』という、朔(新月)の日と冬至の日が重なった特別な冬至です。

19年ごとに行われるとされ、古代には盛大に祝われたそうです。

現代の暦法でも本当に19年ごとにおとずれるのでしょうか? 結論から言うと起こったり起こらなかったりします。

冬至
1957年 12月22日 12月21日
1976年 12月22日 12月21日
1995年 12月22日 12月22日 朔旦冬至
2014年 12月22日 12月22日 朔旦冬至
2033年 12月21日 12月22日
2052年 12月21日 12月21日 朔旦冬至
2071年 12月22日 12月21日


なお、「旧暦2033年問題により、暦を定めることができないため、次は38年後」といった間違いが、ネット上の記事などに載っており、誤解する人がいるようですが関係ありません。
『旧暦2033年問題』とは、いわゆる旧暦の月の名前(正月、如月、弥生……)を、現在の天保暦(旧暦)のルールでは一意に決めることができなくなる問題です。詳しくは国立天文台暦計算室 旧暦2033年問題についてをご覧ください。この記事内にも冬至12月21日、朔12月22日と書かれており、冬至日も朔日も求めることができています。そのうえで異なる日のため朔旦冬至にはならないのです。

19年

昔の暦は月の満ち欠けによって「月」を決めていました。つまり、朔の日から次の朔の前日までを一ヶ月としていました。

月の満ち欠け周期は平均29.53日程度であるため、12ヶ月は約354.367日となります。一方、1年は365.2422日程度であるため、12ヶ月あたり約10.875日足りなくなります。

そこで、だいたい2.7年に1回。ほぼ19年に7回。もっと正確に言うと334年に123回、1021年に376回……のペースで13ヶ月の年を作ると、数値上、帳尻があいます。

このため19年経つと、ほぼ同じタイミングで冬至や朔を迎えることとなり、朔旦冬至が繰り返されます。

(もうちょっと正確に)冬至とは、朔とは

現代の暦法では、冬至とは太陽の黄経が270度の瞬間。朔とは太陽と月の黄経差がゼロの瞬間とされており、冬至を含む日を冬至日、朔を含む日を朔日と呼んだりもします。

黄経とは黄道面と呼ばれる、地球から見たときの太陽の通る面、地球外から見たときの地球の公転面を基準としたときの経度です。春分の瞬間に、地球から見た太陽の方角を経度ゼロとします。

月の軌道は黄道に対して約5度傾いているため、新月は同一方向にあるといっても正確には上下にずれていることがあります(黄緯≠ゼロ)。上下方向のズレは考慮せず、黄経だけ考えて朔とします。
ちなみに、タイミングよく月が黄道面上にいる状態で朔を迎えると、太陽を隠す日食となります。

冬至も朔も、太陽や月の位置を計算し、“瞬間”を求めています。


天体計算の結果

そうして求めたものが

冬至の日時 [JST] MJD 差の日数 朔の日時 [JST] MJD 差の日数
1957-12-22 11:48:37 36194.117 1957-12-21 15:08:46 36193.256
1976-12-22 02:35:09 43133.733 6939.616 1976-12-21 11:05:32 43133.087 6939.831
1995-12-22 17:16:49 50073.345 6939.612 1995-12-22 11:21:32 50073.098 6940.011
2014-12-22 08:03:03 57012.960 6939.615 2014-12-22 10:36:17 57013.067 6939.969
2033-12-21 22:46:02 63952.574 6939.614 2033-12-22 03:47:31 63952.783 6939.716
2052-12-21 13:17:27 70892.179 6939.605 2052-12-21 13:15:17 70892.177 6939.394
2071-12-22 04:04:42 77831.795 6939.616 2071-12-21 20:46:23 77831.491 6939.314

NASA JPL's HORIZONS system (DE431)使用。将来のDeltaTは予測値)

どうして19年ごとにならないのか

考えてみました。

まず、19年でぴったり年月が同期するわけではありません。計算上、19年=6939.602日に対し235ヶ月=6939.688日であり、わずか(約2時間)に異なります。

冬至の19回の期間は6939.6日と平均値に近く、ほぼ一定です。(実は冬至をはじめ二十四節気は月の位置の影響で一定周期にはなりません。しかし19年ごとにみると、月の位置がほぼ一緒であるため、ほぼ一定となるようです。)

ですが、朔望周期の235回の期間は若干ばらついています。

月の満ち欠けの周期(朔望周期)に関して、“平均”29.53日と記述しました。実際には図のように平均よりも長い月が続く期間、平均よりも短い月が続く期間がゆるやかなサインカーブを描き、推移しています。

時間がなかったので詳しく調べていませんが、おそらく235ヶ月の期間のとりかたによっては、総日数が若干長めのときもあれば短めのときもでてきてしまうのです。調べた範囲では、2052年から2071年の19年間の235ヶ月は6939.314日と、平均より9時間近く短い期間になっています。

結構ずれていますが……

昔は計算の結果外れることがわかると、敢えて暦に記載する朔の日をずらしたりすることがあったり、改暦を行ったりしたそうです(詳しくないので、具体的な例はしりませんが)。

気が向いたら、もう少し調べてみたいものですね。