うるう

今年は2012年。4で割り切ることのできるオリンピックイヤーであり閏年です。でも実は閏秒もあるし閏月もある、いつになく“うるう”年なのです。

閏日

なぜ4年に1年だけ2月29日が存在するかというと、天文学的な1年が365.2422日と割り切れない時間だからです。秒で書くと1年が31,556,925.2秒で1日が86,400秒です。こっちの方がより半端っぽく見えるでしょうか。

1年は太陽のまわりを地球が1周、1日は地球が1回転と別々の事象に由来する期間なので、関連性はなく割り切れないものなのです。ただし月など比較的主星との距離が近いものは自転と公転が同期することもあります。(正確には1年≠公転1回転、1日≠自転1回転ですがここでは単に1回転と記述しました。詳しくは暦の整理メモをどうぞ。)

科学における時間の基本単位は秒ですが、生活のサイクルとしての基本は日です。ですので半端な日をつくるのではなく、普段は365日の年をすごし、定期的に366日の年を作って半端な分を対応してきました。その余分な日のことを「閏日」と呼び、閏日がある年を「閏年」と呼びます。ちなみに普段の年を平年と呼びます。

ヨーロッパでは長らく閏年を4年に1回と定めていました(ユリウス暦)。すなわち1年を365.25日とみなしていることになります。ですが実際の365.2422日とのあいだに約1/128日の差があり、約128年で1日少ない日を作らなければ帳尻があわなくなります。128年というと暦を制定する王朝や教会側からすると割と短い時間です。実際、ユリウス暦は長いあいだ使われているうちに誤差が無視できなくなっていました。

そこで1582年に改暦をし、今でもその暦を利用しています。その新しいグレゴリオ暦は400年に97回の挿入を行うことで1年365.2425日とみなしています。これによって1日に達するズレを3,300年近く起こらなくしています。

現在の具体的なルールは、「西暦が4で割り切れる年を閏年とする。ただし100で割り切れ400で割り切れない年は平年とする」です。つまり2000年は閏年だけど1900年や2100年は閏年としないのです。もっとも、あと90年近くは気にしなくても構わないのですが。

閏秒

地球の自転をもとに、1日を86,400秒となるように秒を定義しました。基本単位として定義した秒を変えることはできませんし、そんなことしたら根本から崩れていろいろと困ります。ですが地球の自転速度は厳密に一定ではなく、不規則であったり地震等によりごくわずかに変化したりします。

時刻とは地球の自転に由来するものです。たとえば正午とは太陽が真南にくる時刻です。そのため自転の細かな細かなズレの蓄積が大きくならないように、適宜1日の長さを1秒だけ短くしたり長くしたりしてあわせなければ生活やプログラムされた様々なシステムに支障がでてきます。太陽の位置を基準とした時刻に補正するために挿入ないし削除される秒が閏秒です。

今年の協定世界時6月末の2012-06-30 23:59:60に挿入が行われます。すなわち日本時間で2012-07-01 08:59:60が存在することになります。年としては366 * 86400 + 1秒ある年となるわけです。

この閏秒ですが、存廃に対する議論もあるようです。たとえば2000-01-01 00:00:00から2012-01-01 00:00:00まで何秒あるかは、この期間内に何回閏秒の挿入され削除されたかという別表がないとわからないからです。また、逆に原子時計等で秒をカウントしていても閏秒情報がないと協定世界時を求めることができません。一方で、閏秒を廃止すると時刻と太陽の位置、ひいては昼夜とのズレが生じてくるという問題がでてきます。

閏月

明治5年まで使われていた、いわゆる旧暦は月の満ち欠けを1ヶ月としていました。すなわち新月の日から次の新月の日の前日までが1ヶ月です。15日前後には満月となり(15日目と決まっているわけではない)、上旬の半月は上弦の月、下旬の半月は下弦の月でした。

月の満ち欠けに要す期間は平均29.5306日ですので、12ヶ月だと354.3670日。365.2422日には約10.88日足りません。そこで19年に7回、13ヶ月ある年を作りました。その余分な月を閏月といいます。

閏月を決めるには、通常の月名を決める必要があります。

そもそも閏月を挿入するのは、月名と季節とのズレを少なくする(真夏の師走を作らない)ためですので季節の基準となるものが必要です。それは春分秋分夏至冬至をはじめとする二十四節気です。たとえば春分がいつかを計算して、その日を含む月を如月とするといったような定め方をします。

--------------- 2012年01月23日 朔 -+
 雨水 02月19日                     | 睦月
--------------- 2012年02月22日 朔 -+
 春分 03月20日                     | 如月
--------------- 2012年03月22日 朔 -+
 穀雨 04月20日                     | 弥生
--------------- 2012年04月21日 朔 -+
                                   | 対応しない月←閏弥生
--------------- 2012年05月21日 朔 -+
 小満 05月21日                     | 卯月
--------------- 2012年06月20日 朔 -+
 夏至 06月21日                     | 皐月
--------------- 2012年07月19日 朔 -+
 大暑 07月22日                     | 水無月
--------------- 2012年08月18日 朔 -+
 処暑 08月23日                     | 文月
--------------- 2012年09月16日 朔 -+
 秋分 09月22日                     | 葉月
--------------- 2012年10月15日 朔 -+
 霜降 10月23日                     | 長月
--------------- 2012年11月14日 朔 -+
 小雪 11月22日                     | 神無月
--------------- 2012年12月13日 朔 -+
 冬至 12月21日                     | 霜月
--------------- 2013年01月12日 朔 -+
 大寒 01月20日                     | 師走
--------------- 2013年02月10日 朔 -+

朔望及び二十四節気のデータは国立天文台 暦計算室のものを利用させていただきました。

朔(新月)や二十四節気天文学的にはある一瞬の時刻を指しますが、月名を決めたりする際にはその瞬間を含む日で扱います。05月21日の朔は08時47分に対して小満は00時16分ですが、新しい月は朔を含む日の0時から始まるため、この月は小満を含み卯月となります。

またそのため04月21日からの月には二十四節気の中気(上記のような雨水や春分など)を含まないため閏月となります。閏月の前の月が弥生であるため、閏弥生となります。

さいごに

(日本時間で)閏秒が挿入され、閏月を含む、閏日がある閏年というのは1976年以来2度目のことになるようです。

特に閏月に関しては新暦にはまったく影響しませんが、それでも閏月に閏日閏秒となんとなくお得な気分になる年ですね。